研究概要 |
有機EL素子のさらなる高効率化を主な目的として、有機EL素子の低電圧化を試みた。有機EL素子の低電圧化には新規の電子輸送性材料の開発が重要であると考えられており、新規のフェナントロリン誘導体の合成を行った。新規フェナントロリン誘導体の合成では、鈴木クロスカップリング法を用い3,8-dibromo-1,10-phenanthrolineを基本骨格として3,8位にさまざまな芳香族置換基を導入した。導入した置換基として1-ナフチル、2-ナフチル、2-ビフェニル、9-アントリルを用いた。これらの新規フェナントロリン誘導体をホールブロッキング性電子輸送層および電子輸送層として用いた素子を作製することで従来からもちいられている電子輸送性材料であるバソクプロイン(BCP)、tris(8-hydroxyquinolino)aluminum(Alq3)と比較検討した。その結果、合成した3,8-di(1-naphthyl)-1,10-phenanthroline(1-Nphen)を電子輸送層として用いた素子が従来のBCP、Alq3にくらべ1〜2Vもの低電圧駆動し、1-Nphenが高い電子輸送性を有していることがわかった。また、合成した3,8-di(2-biphenyl)-1,10-phenanthroline(2-Bphen)を電子輸送層として用いた素子は従来のBCPにくらべ低電圧化し、かつその高いホールブロッキング性より素子内部の励起子閉じ込め効果が増加し、素子の量子効率が向上した。以上の結果より、新規電子輸送性材料としてフェナントロリン誘導体の開発が有効であることがわかった。フェナントロリンに付与する置換基によってその電気化学的特性が大きく変化させることができ、電子輸送性材料の新たな設計指針を提示することができた。 また、素子の低電圧化としてホール輸送性材料の検討も行った。フルオレンユニットを有するトリフェニルアミン誘導体を合成したところ、これが従来ホール輸送性材料として用いられているジアミン誘導体(NPD)にくらべ高いホール移動度を示すことを確認した。 以上の結果より、これらの新規合成した材料を用い化学ドーピング(アルカリ金属ドープおよびルイス酸ドープ)を行うことでさらなる有機EL素子の低電圧化が期待できる。
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