研究概要 |
有機EL素子の更なる高効率化のため有機EL素子の低電圧化を試みた。存機EL素子の低電圧化には電子注入層となる新規の電子輸送性材料の開発が重要であるため、電子輸送性材料の合成を行った。基本骨格として含窒素芳香族複素環であるキノキサリン、フェニルピリジンおよびキノリン環としてこれらの誘導体の合成を行った。合成した材料を電子輸送層として有機EL素子へ応用した。その結果フルオレンを中心骨格として2,7位にフェニルピリジニルを置換したものが従来から良好な電子輸送層として用いられているキノリノールアルミ錯体(Alq_3)の素子に比べ約2Vの低電圧駆動することがわかった。以上のことからフェニルピリジニルを有する材料が電子注入および輸送性材料として有効であることがわかった。これらの電子輸送性材料にリチウムやセシウムなどのアルキル金属を化学ドーピングすることて更なる低電圧化が期待できる。 さらに正孔注入層(HIL)として電荷移動(CT)錯体を用いることで低電圧駆動化できることから、強力な電子吸引性材料である新規テトラシアノキノジメタン誘導体(TCNQ(CN)_2)を合成した。TCNQ(CN)_2とアリールアミン誘導体のCT錯体は良好なHILとして機能し、約2Vの低駆動電圧化に成功した。またこのHILを有する素子は、HIL無しの素子に比べ30倍ほど長寿命化することがわかった。また新規アリールアミン誘導体としてフルオレンユニットを有するアリールアミンオリゴマー(DFPA)を合成した。合成したDFPAは高い熱特性を有しウェットおよびドライプロセスによる素子作製が可能な他、DFPAにルイス酸を混ぜることでCT錯体を形成し、ルイス酸ドープDFPAがHILとして素子の低電圧駆動に有効であることがわかった。
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