電子輸送性材料および正孔輸送性材料の新規材料開発を試みた。電子輸送性材料としてフェナントロリンやキノリンおよびピリジンなどの含窒素芳香族複素環化合物を新規に合成し有機EL素子へ応用した。その結果、フェニルピリジン誘導体において有機EL素子の低電圧駆動が確認された。さらにアルカリ金属であるセシウムとの共蒸着膜を用いることで更なる低電圧駆動が可能となった。また電子輸送層における化学ドーピングではアルカリ金属の他にサマリウム、ユーロピウム、ツリウム等の希土類金属を用いることでも低電圧駆動が可能であることが確認された。特にイッテルビウムにおいて顕著な低電圧化が可能であることがわかり、有機EL素子における電子輸送層の選択幅の拡大が期待できる。 さらに正孔輸送性材料として新規アリールアミンオリゴマーを合成し、ガラス転移温度が100℃を超える耐熱性に優れた材料の開発に成功した。正孔注入層として正孔輸送性材料であるこれらのアリールアミン誘導体と強力な電子アクセプターとして機能するテトラシアノキノジメタン誘導体の電荷移動錯体が良好な導電性を示し、アリールアミン誘導体と電子アクセプター材の真空蒸着法による共蒸着膜、さらには混合溶液からスピンコーティングによる塗布法で良好な正孔注入層を形成でき有機EL素子の低駆動電圧化に成功した。 以上、化学ドーピングにより素子駆動電圧を2〜3Vを低減でき、化学ドーピングが有機EL素子の低電圧駆動化ひいては素子特性の効率向上に非常に有用であることが確認できた。
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