前年度までに見出した、高容量リチウムイオン二次電池用Ni38-Sn62合金負極について、電気化学的なリチウムとの合金化・脱合金化反応時に伴う構造変化について詳細に検討した結果、リチウムの挿入にともないNi3Sn4合金相の結晶規則性が失われ、Li-Sn合金相が現われることが示唆された。続くLiの脱離の過程ではLi-Sn合金相の低減、およびNi3Sn4合金相の結晶性が復元されることが確認された。これよりLiとNi-Sn合金が可逆的に反応しそれがこの薄膜の高容量につながっていることが示唆された。この知見は今後の負極材料設計の一つの指針を示すものとして非常に有用であると考えられる。さらに充放電状態が異なる負極のマイクロED(微小部電子線回折)の観察を行った。得られた電子線回折パターンより、充放電前には合金薄膜の高い結晶性が確認され、膜中の原子の並びが高い規則性を有していることが示唆された。しかしながら、薄膜へのリチウムの挿入脱離を繰り返すことにより、原子配列の規則性が少しずつ損なわれ、三サイクル目ではすでに薄膜中の微結晶はex-situ XRD解析では確認できなかったナノオーダーでアモルファス化が進行し始めていることが示唆された。相分離状態を視覚的に明らかにすることはできなかったが、上記の検討よりNi-Sn合金とリチウムとの合金化により生成すると考えられるNiリッチ相とLi-Snリッチ相が明確に分離している状態ではない可能性が示唆された。またNi-Sn合金薄膜の熱処理により負極の劣化が抑制されることが示唆された。これは熱処理により合金薄膜とCu基板(集電体)の間で原子の相互拡散が起こり、密着性を向上させたためだと考えられる。
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