研究概要 |
本研究では、層状ダブルペロブスカイト(DP)酸化物(A(RE)B_2O_<5+δ>(A,RE,Bはそれぞれアルカリ土類金属、希土類、遷移金属元素)を中心とした物質群において、(1)組成と原子配列、(2)電子状態、(3)電気/スピン伝導物性を総合的に研究し、100%スピン偏極度を持ちスピンエレクトロニクス応用が期待されているハーフメタル材料を創製することを目的とした。本研究で得られた成果の主な内容を以下に列挙する。 ・BaRECo_2O_<5+δ>におけるハーフメタル状態発現の可能性:酸素欠損型層状DP酸化物:BaRECo_2O_<5+δ>(RE=Nd,Sm)について実験・理論の両面から研究を行い、化学組成制御によるハーフメタル状態発現の可能性を示した。 ・A_2BB'O_6における混合原子価状態の発現:BサイトオーダーDP型化合物A_2BB'O_6について第一原理計算を行い、ハーフメタル相の存在が示唆された。そこで、BB'=FeNb,FeTaの物質を合成しメスバウアー分光を行ったところ、ハーフメタル性の必要条件と考えられる混合原子価状態を観測した。 ・新規Mn酸化物ハーフメタルの創製:カチオン欠損型ペロブスカイトMn酸化物(LaMn)_<1-x>O_3、及びペロブスカイト型Mn酸化物群の中で最も歪んだ構造を有する(Lu,Ca)MnO_3の合成に成功した。これらの物質においてハーフメタルに特徴的な負の磁気抵抗効果を観測した。特に前者では、第一原理計算よりハーフメタル電子状態が発現している可能性が強く示唆された。
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