研究課題
基盤研究(A)
カーボンナノチューブ(CNT)は、次世代のナノエレクトロニクスを切り開く可能性を大きく秘めた材料である。例えば、半導体CNTをチャネルとした電界効果トランジスタ(CNT-FET)は、バリステイック伝導やクーロンブロッケードが発現する量子ナノデバイスとして期待されている。CNT-FETを集積回路のBuilding Blockとするためには、個々のCNT-FETを独立に駆動できることが必要であり、個々のCNTにゲート絶縁膜とゲート電極が施されたトップゲート構造の形成が不可欠である。トップゲートCNT-FETの作製については、CNTをチャネルとする以外は、ゲート絶縁膜をパターニングする従来の半導体微細加工技術に大きく依存しているのが現状である。そこで、本研究では、トップゲートCNT-FETの構築を高スループット化するため、ゲート絶縁膜で予め被覆されたCNTを作製する技術を開拓することを目的とした。具体的には、パルスレーザー蒸着法により絶縁膜をCNTの一部に被覆し、この技術に基づいてゲート絶縁膜被覆CNTをBuilding Blockとする量子ナノデバイスの開発を目指した。特筆すべき結果として、以下のような新しい事実が得られた。(1)パルスレーザ蒸着法により、種々の無機材料で被膜されたCNTの作製に成功した。例えば、酸化物被膜CNTでは、酸化膜がナノメートルオーダーで同軸状に均一に被膜されており、酸化膜はCNTの形状を忠実に反映していた。また、組成比は導入酸素分圧により精密に制御することができた。さらに、無機材料を繰り返し蒸着することにより、多層被膜CNTの作製にも成功した。(2)開発されたCNT被膜技術を駆使して、金属、合金、化合物被膜CNTやCNTをテンプレートにハイブリッドナノワイヤを作製し、走査トンネル顕微鏡の探針、ナノ電気機械システム(NEMS)のBuilding Blockなどのナノデバイスへの応用に成功した。ハイブリッドナノワイヤのNEMS応用において、CNTをテンプレートに酸化アルミニウムと酸化タングステンの2種の異なる無機材料で被膜して作製したナノワイヤは、被膜材料の熱膨張係数の違いにより加熱するにつれて偏位を示した。これら一連の熱駆動による偏位は繰り返し再現可能であることを確認した。
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すべて 雑誌論文 (44件)
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