研究課題
岩井と大見とからなる研究グループが電子ビーム蒸着法により作成したLaO_xとシリコン基板との界面の熱安定性を、昨年度に引き続き調べた。ラザフォード後方散乱法により決定した元素組成の深さ方向変化を出発点として、La 3d、Si 1s、O 1sの内殻準位からの角度分解光電子スペクトルに最大エントロピー法を適用して組成の深さ方向変化を決定した。その結果、LaO_xとシリコン基板との界面に形成される組成遷移層の厚みが熱処理温度400℃以上で増大することが判明した。次世代CMOSデバイスのために、高誘電率ゲート絶縁膜とシリコン基板との間に均一かつ平坦な極薄SiO_2膜を形成させたスタック構造が検討されている。この構造の各膜厚は、所望する等価酸化膜厚を実現するように設計される。その際、各層の誘電率としては、バルクの高誘電率ゲート絶縁膜とバルクSiO_2の誘電率の値が用いられている。しかし、極薄SiO_2膜の誘電率がバルクのそれと同じという保証はない。そこで、SPring-8の軟X線ビームラインBL27SUと硬X線ビームラインBL47XUにおいて、酸化膜厚0.22〜1.96nmのSiO_2/Si構造のSi 1sおよびSi 2p光電子スペクトルを測定した。Si 1sとSi 2pのケミカルシフト量の差から、中間酸化状態ならびにSiO_2極薄膜の光学的誘電率を推定した。その結果、バルクSiO_2の光学的誘電率は2.1であるが、Si原子の酸化数の減少と共に光学的誘電率が2.8〜5.8に増大すること、SiO_2膜厚約1.0nm以下で光学的誘電率が増加し,膜厚0.22nmでは3.4になることを明らかにした。その後、小林を中心としてこの硬X線光電子分光を活用する分野を広げる試みがなされ、半導体集積回路への応用に加えて、各種物性の電子状態の解明への貢献など大きな広がりを見せている。
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