研究概要 |
平成16年度は,大気中で3次元的に捕捉された誘電体微粒子に,強度変調および偏向制御されたレーザ光による変調光放射圧を作用させることによって3次元的な微小振動を与え,それをCMM用位置検出プローブとして用いる計測技術の確立と基本特性の解明および高度化を目的とした基礎実験装置の構築および基礎実験を遂行し,以下の研究成果を得た. 1.振動光学素および振動検出光学系の基本仕様を決定し基礎実験装置の詳細設計および試作を行った.基礎実験装置は,赤外YAGレーザ(波長1064nm)にXY軸において周期的偏向を与える2軸AO偏向素子を利用した振動光学系,He-Neレーザとフォトダイオードなどからなる振動検出光学系および顕微鏡光学系などを一体化して構築した.さらに,実験装置を駆動する計測制御ソフトウェアを製作した. 2.粒径8μmのプローブ球の振動状態を解析するため,光放射圧の力学的特性をバネーダンパ系の微分方程式でモデル化し振動振幅および位相遅れの周波数特性にっいて明らかにした.さらに,実験結果をそれらの解析結果と比較しプローブ球振動状態の制御技術を確立した. 3.大気中において3次元的に捕捉・振動させたプローブ球が被測定物に接近したときの振動振幅および位相変化を実験的に解析し,振動検出信号から得られるプローブ球の位相遅れ情報から被測定物の位置を計測する基本原理を確立した. 4.上述の位置検出原理の有効性を示すため,FIB(Focusing Ion Beam)加工機によって作製したシリコン表面微小段差(約1μm)の測定を遂行した.その結果,不確かさ70nm以下の精度で垂直方向の位置検出が可能であることを明らかにした. 5.FIB加工機を用いて,プローブ球上面を微細加工しスピン型プローブ球が試作できることを明らかにした.さらに,FIB加工機のデポジション機能により,長さ1μm,直径数100nmの微細スタイラスがプローブ球上に加工できることを明らかにした.しかし,FIB加工機を用いた場合,プローブ球にドーピングされたガリウムの影響のため,プローブ球の光捕捉が困難になることが明らかになった.
|