研究概要 |
平成17年度は,大気中で3次元トラップされた振動微粒子を用いたナノCMM用位置検出プローブの高精度化を目的とし,基礎実験装置の改良および基礎実験を遂行することにより,偏向制御されたレーザ光による変調光放射圧によって振動振幅および周波数を高度に制御する技術を開発し,以下の研究成果を得た. 1.新たな光検出素子PSD(Position Sensing detector)を導入した改良型の振動検出光学系を試作し,従来方法では不可能であったマイクロプローブ球の運動挙動を検出する,新たな振動計測手法を開発した.その運動解析によって,位置検出精度の安定性が大きく向上できることを示した. 2.直径約8μmのプローブ球に,振幅190nm程度,周波数1.7KHz程度の横振動を与え,試料表面にナノメートルオーダの距離まで接近させたときのプローブの位相遅れを測定する基礎実験を遂行し,マイクロプローブ球と試料表面の間に形成される空気層の粘性抵抗係数の挙動について,実験的および理論的に詳細な解析を行った.その結果に基づき,従来よりもさらに高精度で安定した計測が期待できる新たなプローブ振動制御法および振動検出信号処理アルゴリズムを開発した. 3.プローブを最適な周波数に設定する周波数チューニング技術を用いてプローブ振動を制御し,シリコンウエハ劈開面への接近過程における振動変化を測定した.プローブをシリコンウエハ劈開面へ接近させる際はピエゾステージを利用し,劈開面から1μm程度の距離までは100nmステップで,その後は25nmステップで移動させた結果,マイクロプローブ球の位相遅れ挙動が測定面近傍において急激に変化していることが確認された. 4.上述の位相遅れに基づいた位置検出を行った結果,横方向の分解能は23nm程度となることが確認できた.さらに,標準偏差13.7nmの非常に高い繰り返し特性が得られた.
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