研究概要 |
全ての輸送機関駆動等に不可欠な歯車は、その100nmオーダの3次元面形状精度が性能を決めるため、その品質管理に用いられる歯形測定機の精度の維持は重要な課題である。ISOの品質保証制度の影響もあり、機械部品の品質保証に用いられる形状測定機には、測定の不確かさを明示することが求められている。この要求に理論的に正しく対応するため、測定機の構造、動作に対する完全なシミュレーションモデルを構築し、これをバーチャルマシンとして、可能性のある種々の影響因子を考慮した理論測定結果を求め、現実の測定結果と比較することにより、歯形測定機の精度検定を行うシステムを構築し、トレーサビリティーのある歯車品質保証制度の技術的根幹を確立することを、本研究は目指すものである。 本年度は本研究の第一年度であり、以下の実績を上げた。 1 歯形測定シミュレーションモデルの構築: 歯形測定機のバーチャルマシンの基礎となる、測定機の構造、動作に対するシミュレーションモデルを構築し、その動作を確認するとともに、歯車測定精度に影響を及ぼす可能性のある因子を全て取り込むことが可能であるかの検討を行った。 2 Involute Reference Artefactの開発(設計と試作): 歯形測定機の不確かさの評価の基礎となるInvolute Reference Artefactを試作した。超精密値付けを可能とするため、歯車外周90度毎の4歯以外を欠歯とする基準軸付きアーティファクトの構造を提案し、ねじれ角が0,10,20,30,40度で、右ねじれと左ねじれの合計9個のアーティファクトを製作して、その歯形、歯筋形状を測定した。これにより、今後、検定を行うべき歯形測定機の評価原器の基礎となる第一歩を踏み出した。
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