研究概要 |
表面に熱放射光と同程度の周期を有する表面回折格子構造を形成することにより、熱放射スペクトルを制御できることを利用して,熱光起電(TPV)発電システムの発電効率の向上を目指した波長選択性エミッタの研究を行っている。これまでの研究から、微細構造と熱放射スペクトルとの相関を調べた結果、周期構造に起因したマイクロキャビティ構造による波長選択性熱放射が観測されていることがわかった。本研究では、熱放射光を発生している高温物体のごく近傍において発生していると考えられている、近接場熱放射光を光プローブ顕微鏡により検出し、高温物体表面での電磁波(熱放射光)微細構造との関係についてのより詳細な知見を得ることを目的としている。 1.本年度は,前年度において開発した光波伝播シミュレーション法の一つであるFDTD法のコードを用いて近接場領域での光伝播についての基礎研究を行った。特に,近接場領域の電場強度の空間分布と微細構造との関係について検討を行い,実験的な検証をどのスケールにおいて行うのが適当かを研究した。 2.試料として表面プラズモン密度が高い銀を選択して、その微細加工プロセスについて検討を引き続き行った。これまでのところ,粒界成長を初期に行うことにより,ナノ構造の安定性が向上することが分かったが,900Kの試験温度において完全に安定な条件は見出せていない。 3.超高真空環境下において近接場領域の熱放射を測定可能な近接場顕微鏡を試作した。製作に予定より時間がかかり,本年度は基本性能のテストを行った。来年度において本格的に近接場における熱放射の観測を行う予定である。
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