研究概要 |
マイクロ・ナノスケールレベルにおけるセンシング・コントロール技術をon-chip化した次世代マイクロ熱流体デバイスの開発には,固液界面における分子・原子状態をin-situモニタリング可能とする技術,液液界面における(電気)化学反応の定量的センシング,そして分子レベルの選択的拡散輸送技術が求められている.本年度は,固液界面近傍における物質濃度と分子運動・束縛状態を核磁気共鳴(NMR)信号と分子動力学法との結合で算出する新たな界面分子NMR計測を確立することを目的として,界面分子NMR計測の基盤技術の構築を行った.またマイクロチャネル内の界面動電駆動流を支配する固液界面に形成される電気二重層厚さをレーザ光の全反射によって発生するエバネッセント光を用いて計測を可能とする技術の開発,そしてナノスケール粒子を選択的に分離を行う制御技術の開発を行った.界面分子モニタリングデバイスとしての界面分子NMR計測は,小型磁石及びマイクロ受信コイルから成るNMR検出部と,共鳴電磁波の伝送および解析を行うNMRコンソール部から構成され、本年度はこれらの設計・製作を行った.特に,極微細領域からのNMR信号取得が可能でかつマイクロリアクターへの実装が容易な「外径0.5mmの超小型表面型NMR受信コイル」を試作した.この表面型コイルの感度特性の把握と高感度化を図り,局所的な範囲内での界面近傍から放出される微弱なNMR信号を高利得で検出し,低ノイズで検波する手法を開発した.電気二重層形成及び過渡特性メカニズムの解明に繋がる,緩衝液イオン濃度の違いによる電気二重層厚さ変化を,エバネッセント光を用いて定量的に計測を行い,理論と定性的に一致する結果が得られた.更に,緩衝液の導電率勾配を変化させ,ナノスケール粒子にかかる抗力及び電気泳動力をコントロールすることによる,ナノスケール粒子選択的分離技術の開発を行った.
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