研究概要 |
本研究は、磁気軸受が本来不安定系であり、かつ、磁気吸引力は強い非線形性を有しているため、制御によって安定化することが不可欠である。この磁気軸受系に対して従来の制御方法は、線形制御理論に基づいて、向かい合う1対の電磁石に対してバイアス電流を流すことにより線形化している。このため、渦電流損失は無視できず、回転抵抗や発熱などを引き起こして、かつ、消費電力が大きくなるという問題がある。さらに、大変位時には制御性能が劣化するということがある。従来の磁気軸受応用では以上の問題点は特別の意味を持たなかったが、近年、電力貯蔵フライホイールが磁気軸受応用として脚光を浴びており、上述した問題が無視できなくなってきた。 本研究の目的はバイアス電流を流さないで非線形性を有したまま、非線形制御理論に基づいて、ゼロパワー切換制御法によって安定性を図り、かつ、消費電力を低減して、ロータが高速回転できる制御器を設計してその有効性を検証することである。本研究ではバックステッピング法、スライディングモード制御理論、H∞制御理論、LQ制御理論を適用してゼロバイアス制御法を確立した。そして,制御器の出力である磁気吸引力を発生させるために必要な制御電流を,電磁石の切換条件を基に逆算して加える,というシンプルかつ実用的な手法を提案した。そして,本提案手法を5軸制御型磁気軸受,さらに電力貯蔵用フライホイールを想定したフライホイールモデルに適用し,実験によりその有効性を検証した。さらに、ゼロパワー制御に適応型不釣合い振動制御を付加してその有効性を検証している。結果として,フライホイールモデルにおいて100Hz(6000rpm)の高速回転に成功し,浮上時の消費エネルギーも従来法に比べ著しく低減できることが示した。
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