研究概要 |
「電気で走る近未来車両の先進制御技術に関する研究」と題し,近未来から今世紀半ば以降にかけて広く使われるであろう,電気モータを動力源とする自動車(純電気自動車,ハイブリッド車,燃料電池車など,以下,総称して電自動車と呼ぶ)において,いまだ広く認識されているとはいい難い,電気モータによって初めて実現可能になる先進的な電気制御技術の可能性を追求し,操縦性やエネルギー経済性に優れた車両を実現することを目的としている。 電気自動車には,従来のガソリン車にはない3つの特長がある。すなわち,(1)トルクの応答速度が非常に速い。 (2)出力トルクを正確に把握することができる。 (3)モータは小型化が可能であり各輪に分散配置できる。 本研究では,このような電気自動車の積極的な優位性に光を当てる。今回新しく電圧駆動形BLDCモータによる新しい車両の製作を含む,より詳細で実際的な実車実験によって,真の実用化に向けた問題点の洗い出しと解決を行う。本研究の成果が広く用いられるようになれば,スリップ等の危険性が格段に少なくなることはもちろん,すべりやすい路面でも高度な姿勢制御によって自動車運転の安全性向上に大いに貢献できる。また,より損失の少ないタイヤを用いることによって,電気自動車の大きな問題であるエネルギー効率を,飛躍的に伸長できると考えられる。 本年度の主な成果は下記のとおりである。 (1)東大三月号IIを用いた詳細実験 タイヤと路面間の増粘着制御の理論(MFC,最適スリップ率制御など最も内側のマイナー制御ループ)を一般化するとともに,とくに車体すべり角βの推定に関して画期的な成果が得られた。非接触車両速度計,ヨーレートセンサ,加速度センサなどが役に立った。 (2)新車両「カドウェルEV」の製作 増粘着制御の原理は,車輪が小さなスリップをおこしたとき,ミクロな時間スケールでは大きなトルク垂下特性を示すが,マクロな時間スケールでは定められたトルクを出力する特性になればよい。この特性は電圧源で駆動される分巻直流モータの特性そのものである。これを現在電気自動車に好んで用いられるのは永久磁石を使った交流モータで実現するための設計を行い,メーカに発注,2004年3月に無事納入された。 (3)実験室における予備実験 上記の新車両において実現を目論んでいる制御論理について,実験室のMGセットを用いた予備実験を行っており,目論み通りの制御特性が間違いなく実現できることを確認した。これはこれで重要な知見であるので,国際会議などで発表を行っている。
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