研究概要 |
(1)時間分解フォトルミネッセンス(TRPL)測定系と近接場光学顕微鏡(SNOM)を融合させることにより時間-空間分解発光ダイナミクス測定装置を構築し,青色発光InGaN系量子構造の評価を行った。その結果,光励起によって生成したキャリア・励起子が局所的なポテンシャルの極小領域へ局在して発光再結合しているダイナミクスと非輻射再結合中心へ捕獲されて非発光しているダイナミクスをマッピングすることに初めて成功した。 (2)青色,緑色発光InGaN量子井戸構造において発光のブリンキング(明滅)現象を観察した。この現象は,局在したキャリアとその近傍に存在する非発光中心に捕獲されたキャリアとの相互作用の有無によって発光遷移確率が秒〜サブ秒の時間スケールでスイッチングすることに起因しており,その際に空間電荷によって発光波長も変調を受けることを明らかにした。 (3)われわれが提唱している技術開発を推進する上で必要不可欠な光照射用と光検出用の微少ファイバーが同一ヘッド上に並んだタイプのマルチファイバチップを設計し,フォトリソグラフィー技術により試作した。現状で開口径:200nm,開口間距離:7μm,ファイバー開口数:7本を実現,実際にマルチモードで伝搬・導波していることを実証した。 (4)近接場プローブを用いた時間分解測定では,微小領域からのフォトンを高速かつ高感度に測定することが必須である。そのために,ファイバーコアにおける光の分散特性がパルス伝達に及ぼす効果やマルチプローブ間におけるクロストーク等を現有のストリークカメラや光オシロスコープを用いて解析評価し,マルチプローブヘッドの開発のための基礎データとした。
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