研究課題
基盤研究(A)
本研究は、未開拓周波数であるテラヘルツ帯の固体増幅デバイスとして新しく提案した電子のフォトンアシストトンネルによる光遷移と走行電子波のビートによる集群効果を組み合わせた三端子素子の実現を目標として行い、以下の成果を得た。THzデバイス形成に向けて、ポテンシャル障壁が高く、尖鋭な量子準位形成が期待される絶縁体/半導体(CaF_2/CdF_2/Si)および金属/絶縁体/半導体(CoSi_2/CaF_2/Si)ヘテロ接合材料系を選択し、サブミリ波用集積導波路形成プロセスに自由度のあるSi(100)基板上に、アニールとナノエリアローカルエピタキシーを併用する一連の結晶成長法の考案により、CaF_2/CdF_2/Si共鳴トンネルダイオード(RTD)を形成し、室温でピーク/バレー比10^6のきわめて大きな値をSi(100)基板上で初めて達成した。提案したデバイスの基本動作を把握するため、半導体中の二次元電子ガスを用いた平面型デバイスを作製してミリ波帯で動作測定を行い理論的特性と一致する結果を得た。これにより提案したデバイスのTHz帯での動作が期待できることが明らかになった。並行して、デバイスに一体集積するためのTHz帯微細アンテナの構造を提案し、金属/絶縁体/半導体ヘテロ接合への適用に先行して半導体ヘテロ構造を用いてRTDと微細アンテナの集積構造を形成し、1.02THzの高調波発振を室温で達成した。これは高調波発振ではあるが、単体の室温電子デバイスとしては、これまでの最高周波数であり、初めてTHzに達したものである。さらに、理論解析により構造を最適化すれば基本波でも2THzを越える発振が可能であることを示した。このデバイスは、それ自体がTHz帯の光源として有用な特性を持つことが示されるとともに、金属/絶縁体/半導体THzデバイスの最適な構造に対する指針となった。
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