研究課題/領域番号 |
15206044
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
篠田 裕之 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 助教授 (40226147)
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研究分担者 |
安藤 繁 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 教授 (70134468)
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キーワード | 2次元通信 / ユビキタス / センサネットワーク / 人工皮膚 / ウエアラブル / 分散コンピューティング / 拡散信号伝送 / インタフェース |
研究概要 |
二次元通信とは、導電性の布やシートに生じる電磁的作用を用いて通信を行う新しい技術である。通信シート内には個別配線は存在せず、そこに埋め込まれた通信素子間でパケットを伝送することで、2次元面内の任意点間でのデータ転送を行う。 二次元通信の開発は、民間企業においてもすでに始まっており、2次元通信素子のLSI開発と通信プロトコルの開発は、その共同開発企業において行われた。その結果、動作周波数55MHzの通信LSIの試作に成功し、ホップ数4の連鎖伝達において2Mbpsのリアルタイム動画転送を実験的に確認した。また、膨大な数の通信素子を含む通信シート内で、通信経路が複雑に交差する場合においても、スループット、遅延、遅延変動を保証可能な伝送アルゴリズムを確立することができた。 このような民間企業を中心とした研究と密に連絡を取りながら、本研究ではより基礎的なテーマに焦点をあて研究を行った。一つはLSIを高速動作させるための基礎データの取得であり、もう一つは二次元通信の将来的な応用のための基礎研究である。二次元通信においては、微小なCMOSチップ内に通信とセンシングなどの機能を集積化する必要がある。そのためアナログ回路の動作を正確にシミュレーションするためのデバイスパラメータを試作素子によって詳細に測定した。それらの評価実験のために、試作後のLSIの配線を変更するためのレーザーカッターを購入した。もう一つの研究の柱は、二次元通信の重要なアプリケーションである人工皮膚実現のための基礎研究である。二次元通信によって触覚素子を結合し、人工皮膚を実現することを計画しているが、触覚素子がもつべきセンシングの能力については、未だに明確にはなっていない。そこでまず人間の皮膚が検出している情報を明らかにする研究を行った。人間の皮膚の2点弁別閾は手の平で1cm程度、前腕部で数cmと言われており、比較的大きな値であるが、どの部分であっても鋭いピンの先端と滑らかな表面は見分けることができる。この鋭敏な検出能力をもつように素子を配置すると莫大な数の触覚素子が必要とされる。本研究によって、表面の細かい構造を見分ける知覚が、皮膚表層の2種類の機械受容器の発火比率の検出によって可能であることを手の平において指摘した。さらにその場合に利用されているパラメータは2点弁別閾程度の径の領域における各受容器の発火量の総和のみであることを示唆する実験結果を得た。この性質を利用し、2点弁別閾程度の間隔で配置されたセンサが、これら2自由度の変形特徴を検出できる人工皮膚のセンシング構造を提案し、まばらな素子配置によって触感を検出する人工皮膚の設計を行なった。
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