本年度は動的に経路が切り替わる光ネットワークにおける分散値変動に関する検討と、分散変動を監視するための分散モニタの開発を行った。 まず、分散変動を監視するための手法として、申請者が従来から提案している光周波数変調法をベースにした高精度、高速分散モニタを開発した。本手法では、光源の光周波数を低周波でわずかに掃引して、光周波数の変化と分散値によって引き起こされる伝送遅延時間の変化から分散値をモニタする。測定量が受信信号のクロック信号の位相変化として現れるため、雑音の影響を受けにくく、インサービスで高精度に分散値が求められるという特徴を有する。当初の予定では、従来の光周波数変調法での変調速度を1000倍程度に高くして応答速度を高めること計画していたが、各種実験的な検討を通じて変調速度を従来の100kHz程度に制限しても十分な高速性と測定精度を保つことができるような信号処理方法が見つかり、こちらに注力して研究を行った。測定系を最適化した結果、変調速度を逆に10分の1程度に遅くしたような場合においても測定時間60ミリ秒以下で測定することに成功した。これにより、動的なネットワーク構成の変更に対しても十分追随できるような分散モニタを実現することができた。また、従来困難であった可変分散補償器の過渡応答なども求まるようになり、測定器としてのアプリケーションも視野に入ってきた。 光ネットワークにおける分散値変動については、モデル化をすすめるとともに、計算機上で模擬するためのシミュレータの開発を行った。これにより、伝搬後のパルス波形、分散トレランス等が自動的に計算できるようになり、point-to-pointでの分散変動について検討を進めた。また、分散が変動する要因としては、ファイバの分散値の変動と経路制御による総分散量の変化を考えていたが、実験等で可変分散補償器のドリフトの問題が明らかとなり、各種分散補償器の特性評価に着手した。
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