本年度は、動的に経路が切り替わる光ネットワークにおいて波長分散を適応的に制御するために必要な高速分散モニタと分散補償器を開発し、それらを組み合わせたデモンストレーションを行った。 まず、高速な分散モニタとしては、光周波数変調法の研究を昨年度より引き続き行い、可変分散補償デバイスの過渡応答を測定するのに十分な速度と精度を有するリアルタイム分散測定器の開発した。この測定器は、従来の測定器と同程度の測定精度(1ps/nm)を維持しながら、測定速度を数ミリ秒まで短縮化することが可能であり、チャープドファイバブラッググレーティングを用いた可変分散補償器の過渡応答などのデバイス評価に応用に成功した。 また、このほかに受信端で光フィルタを操作して分散値をモニタするディザフィルタ法を開発した。光周波数変調法では送信器の構成の変更が必要であったが、新たに提案したディザフィルタ法では送信器の改造は不要であるという利点を持つ。予備的な実験を行ったところ、測定時間が数百ミリ秒で、測定精度は10ps/nm程度のものが実現された。 また、開発を進めてきた分散モニタ技術と高速分散補償技術とを組合せることにより、適応分散補償システムを構築した。チャネルあたりの動作ビットレートは40Gb/sである。実験室内で2x2の光クロスコネクトノードと伝送ファイバを組み合わせて小規模な光ネットワークを構成し、伝送路の切り替えに伴う分散値の変化に対処できるかどうかを試したところ、自動的に可変分散補償器の補償量を調整して150ミリ秒以内に符号誤りが生じない状態にすることが出来た。これらの実験を通じて、高速な適応分散補償を行うための問題点として、(1)分散補償器の高速化、(2)分散モニタの高精度化、(3)RS-232CやGPIBなどの汎用のコンピュータインターフェースのデータ転送速度によるボトルネックなどを挙げ、今後の超高速光ネットワークを実現するための指針を示した。
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