腰痛疾患者に対するアンケート調査では、住宅内での痛みのある動作は、被験者全体では、「起き上がり」「洗顔」「床座」「床からの立ち上がり」「椅子からの立ち上がり」「低い所の収納」などが上位となり、属性別集計では、20代〜40代は、「椅子座」50代〜70代「階段の昇降」主婦「炊事」会社員、学生「椅子座」などとなった。これらをもとに、昨年度に引き続き動作計測では「収納動作」を取り上げ、収納棚のしつらいによって身体への負担(腰部の力学的負担、生理的ストレス、主観による各評価)がどうかわるかを実験した。5タイプのしつらえ(断面方向のデザイン)を設定し、収納棚の高さ(身長の%で実験)、奥行きの違いを加えて、被験者に[体重×4%]の重さの荷物を載せる、取り出すの動作を行ってもらった。5タイプのしつらいは住宅内の収納を参考にしており、A壁全面収納棚で足部は扉付き顔部は扉なしタイプ、B足部分の踏み込み可能タイプ、C顔前面に壁があるタイプ、D吊り戸棚タイプ、E引き出し型タイプである。いずれの年齢層においても、上位を占める(腰部負荷の少ない)収納計画は、しつらえAまたはBと、高さ100%または85%の組み合わせのものである。一方、しつらえC以外の高さ40%・しつらえEの収納計画は下位を占め、適切でない収納計画といえる。また、心拍数の結果を身体の総合的負担とみなし、腰部負担と合わせて分析するを行った。以上の結果をまとめると、1、腰部負荷からみた最適収納計画は、身体への総合的な負担からみた最適収納計画とは異なるといえる。2、高齢者と若年者では、適する収納計画が異なる。3、腰部への負担が少ない収納計画は、デザインの要素(高さ・奥行き・しつらえ)を区別して評価することはできず、それらの組み合わせによって(3次元的にとらえることで)、はじめて評価することができる。などが明らかになった。
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