昨年まで、階段昇降動作、立ち上がり動作、収納動作の各動作についてVICONを用いて腰部モーメントの計測を行い、若年者と高齢者の動作の違いと空間のしつらいとの関係が明らかになった。 加齢対応住宅では、腰部疾患のある人や身体の弱った高齢者にとっては、腰部負荷が少ない動作となるように考えるべきである。しかし筋肉や骨格はある程度の運動負荷をかけることで、その機能が維持され疾患を予防するという視点もある。そこで腰部負荷値としての腰部モーメントと合わせて、筋電計による筋電位計測を合わせて行った。また住宅の動作だけでなく高齢者用の運動プログラムの計測を行って比較する事で、適度な運動と過度な負担というものを検討した。これにより、住まい手の腰への負担を軽減するという中に、負荷軽減だけでなく、腰部周りの筋や骨格を鍛えて対応するという増進の考え方を取り入れ、加齢により様々なライフステージにある住まい手にあわせた空間づくりの可能性を示した。 一方で、寝たきりなどの介護状態になってしまった揚合には、住宅内での動作が限られ腰部負担と空間の関係はあまり問題とならなくなるが、今度は介護者に負荷がかかり、介護の現場でも介護者の腰痛は職業病であるといわれている。そこで、介護用具を用いた場合の負荷軽減、また、住宅で介護を行う場合の介護環境(部屋の大きさやベッド高さ等)と腰部負担、負担感の計測実験をおこなった(VICONを用いた実験室での実験)。介護用具の利用により負担を軽減する事ができる事、また介護環境については、ベッド高さなどが大きく負担に関係する事がわかった。空間の大きさについては腰部負荷に大きな差は見られなかったが、負担感に違いが見られたため、その原因については今後検討する必要がある。また可搬型の介護計測装置の精度の検証をVICONとの比較ですすめている。
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