研究概要 |
特定の電子濃度において特定の相が安定化することを指摘したHume-Rothery則は70年以上にわたって冶金学の黄金則として合金設計に利用されてきた。本研究はこの経験則が何故成り立つかを理解し、この機構で安定化する物質がフェルミ準位に擬ギャップを形成することを活用して新しい熱電材料の創製を図ることが目的としている。本年度の研究実績を以下に示す。 (1)Al-Li-Cu近似結晶の電子構造をLMTO-ASA法及びNearly Free Electron近似で計算し、系を安定化させるフェルミ準位に生成する擬ギャップが(631), (543), (710), (550) zoneとフェルミ面の相互作用で生じていることを実証し、これまで経験則として使われて来たHume-Rothery則の物理的解釈を与えることに成功した(佐藤、竹内、水谷)。 (2)Al-Re-Si近似結晶を作成しその擬ギャップ構造をバンド計算と高分解能光電子分光法で精査し、同時にゼーベック係数を測定しフェルミ準位における擬ギャップ構造と熱電特性の関係を明らかにした(竹内、生田、水谷)。 (3)Fe_2VAl系では擬ギャップ内のフェルミ準位をAlのSi置換及びVのTi、Mo置換で移動させゼーベック係数を正から負(-140μV/K)へと大きく変化させることに成功した(西野、水谷)。
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