相分離を伴うシリカのゾル-ゲル反応により、マイクロメートル領域に鋭い細孔径分布を持つ多孔性ゲルを作製した。気孔率の異なるマクロ多孔性ゲルに色素修飾されたアルコキシドを用いてフルオレセインを導入し、共焦点顕微鏡を用いた深さの異なる数十枚以上の2次元画像から再構成された3次元座標情報を得た。この座標情報を元に、試料内の骨格とマクロ孔の空間分布を統計的に処理し、細孔径分布、気孔率など、従来間接的な方法で測定されてきた諸物性を、実空間の構造から直接決定する方法を確立した。次に、骨格構造の界面曲率解析を行い、平均曲率、ガウス曲率、およびそれらの面積規格化平均値を算出することにより、マクロ多孔構造を形成している界面の幾何学的特徴を定量化することができた。他方、骨格およびマクロ孔の連続性に着目して、それらのつながりを抽出する細線化の手法を駆使し、マクロ多孔性ゲルの骨格およびマクロ孔の、網目構造中の分岐数の分布を明らかにした。さらに、この空間配置情報を参考にして、テトラポッド型の基本構造の無限繰り返しからなる、共連続マクロ多孔性ゲルのモデル構造を構築し、マクロ孔を流れる流体の輸送挙動をシミュレーションによって予測すると共に、実際の圧力損失データと比較した。圧力損失の気孔率依存性は、実際の多孔材料において、いずれのモデル構造よりも強くなった。実際の多孔材料の骨格の形態を考慮することにより、モデル構造をさらに改良する方法を提案した。マクロ多孔性担体の分離・反応場としての応用において、流体輸送特性と細孔構造との詳細な対応は、ナノ領域の反応とマクロ領域の物質輸送のバランスを決める重要な情報となる。
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