研究概要 |
アルミニウム基粒子分散複合材料は軽量で高い強度と耐磨耗性を兼ね備えた優れた機能材料であるが、これまでの製造法では変形加工が不可能であり、リサイクル性が極めて悪いという大きな問題を内包している。本研究では、溶融金属中に分散したセラミック粒子を外部からの誘導電磁力によって必要な個所に集積させる、新たな製造法についての様々な検討を行った。 実験的研究においては、1.周波数による粒子集積層厚みの制御性を検討し、周波数200,80,30kHzに対して、それぞれ0.58,0.91,1.49mmの表皮厚さまで集積層を形成することができた。ブレーキ材料などに適する厚い集積層を形成するために、表皮厚さが4.7mmに達する周波数3kHzを試みたが、溶湯の激しい電磁流動のために集積層が得られなかった。そこで、電磁流動を未発達に抑えながら粒子の分離を行うことができる間欠的な磁場印加を試みた。その結果、連続磁場印加ではほとんど形成されなかった粒子集積層が2mm程度まで形成され、且つその厚みが位置に寄らず一定となる傾向が確認された。ついで、2.印加電流による粒子集積密度の制御性について検討し、30kHzにおいて78〜200Aの電流範囲で0.13〜0.23の範囲で粒子集積密度を変化させることができた。3kHzの間欠磁場印加においては、粒子集積密度が0.5以上という驚くべき結果を得た。このような高密度の粒子集積が得られるメカニズムは不明だが、本現象の応用が大いに期待される。3.SiC粒子を円柱試料側面に局部集積させた粒子分散合金の変形性と耐磨耗性について調査した。圧縮変形性は良好でクラックも認められなかった。一方、ネジ加工においても良好な加工性が得られたが、ネジ山頂部に深さ方向へのクラックの生成が認められた。今後、様々な熱処理条件でクラック生成を防止できる条件を調査する必要がある。耐磨耗性については、同じ粒子体積率の一様分散材料と、本研究で得た部分集積材料との間に差異はなく、部分集積化において耐磨耗性の劣化の問題はないことが分かった。 理論的研究においては、電磁力による粒子の分離・集積と、流動による妨害効果を考慮した数値解析を行った。まず、溶湯に作用する電磁力を数値的に求め、その力による粒子分離速度を定量的に算出した。その結果は流れの影響がない場合の実験値と概ね一致した。乱流下のNavier-Stokes式を数値的に解いて溶湯の流速分布を求め、るつぼ壁付近の速度勾配場で作用する揚力を算出した。その結果、粒子集積層厚みの場所による差異は、揚力による電磁分離の妨害作用によってよく説明された。
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