研究課題
基盤研究(A)
大規模太陽光発電はクリーンエネルギーシステム構築に不可欠である。バルクシリコン型は、資源量・安定性・安全性・発電効率等に優れ、現状8-9割を占める。しかしシリコン供給が半導体産業に依存し、生産量拡大の限界が指摘されている。本研究では、シリコン基板の大規模・低コスト製造法を研究した。現状、シリコン基板はインゴットのスライスで作られ、基板厚さ換算500μm程度のシリコンを消費している。厚さ10μm程度の薄膜に置きかえれば、大規模化・低コスト化が同時に果たせる。そこで、単結晶シリコン基板を鋳型とし、犠牲層を介して発電層シリコンをヘテロエピタキシャル成長、犠牲層を溶解し、単結晶シリコン薄膜を得、基板を繰り返し利用するエピタキシャルリフトオフ(ELO)法を研究した。この際、発電層シリコンのエピタキシャル成長が重要となる。化学蒸着(CVD)法が一般に用いられるが、原料のクロロシランの利用率が低い。クロロシランは金属級シリコンと塩化水素の反応で合成する為、そこにCVD出口ガスをリサイクルすることで、金属級シリコンが入り単結晶シリコン薄膜が出る、無駄のないプロセスができる。現行のクロロシラン製造プロセスの調査に加え、クロロシラン生成とCVDの反応速度過程の実験的検討も行い、リサイクルプロセスの妥当性を検証した。しかし、塩素を用いることによる不純物の混入や、シリコンエピタキシャル成長中の犠牲層の構造劣化の問題が判明した。一方で、一般には低温で低速にエピタキシーさせる物理蒸着(PVD)法が本プロセスに有効なことが示唆された。急速蒸着(RVD)法のコンセプトの下、基板温度800-1000℃にて10μm/minのエピタキシャル成長を確認した。ELO法と、RVD法を組み合わせ、小面積ながら厚さ5-10μmの単結晶シリコン薄膜のリフトオフに成功、これはシリコン問題の解決に繋がる重要な成果である。
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