モレキュラーインプリンティング不斉触媒の開発と分子認識機能の創出に関する研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15206087
• 研究種目: 基盤研究(A)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 岩澤 康裕 東京大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40018015)
• 研究分担者: 佐々木 岳彦 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (90242099)
• キーワード: 不斉触媒 / モレキュラーインプリンティング / 固定化 / 触媒設計 / ロジウム触媒 / バナジウム触媒 / 活性構造 / 時間分解X線吸収微細構造

研究概要

本研究は、生物現象を範としつつも生体酵素システムを越える完全触媒反応系の実現に向けて、固体表面を媒体とする無限の展開が可能な人工酵素型の分子認識能を持つ、Molecular Imprinting(モレキュラーインプリンティング:分子刷り込み)不斉触媒を開発し高次不斉触媒機能の創出を図ることを目的とする。また、時間分解エネルギー分散型X線吸収微細構造(DXAFS)法により、触媒特性を生み出す構造ダイナミクスをその場観察することで反応制御の原理を明らかにし、触媒開発にフィードバックすることも目的とする。
Rh_2(CO)_4Cl_2やRh(π-allyl)_3を前駆体とし、SiO_2上にRhを固定化し、PhC(CH_2OH)=CH_2の半水素化中間体のテンプレートとしてPh-Glycinol(N配位子)、或いはアルケン水素化反応の半水素化アルキル中間体のテンプレートとしてP(OCH_3)_3を用いて、4配位Rh錯体を設計した。これをSiO_2薄層マトリックス化して、テンプレートを除去することでテンプレート形状の空孔を持つMolecular Imprinting触媒を得ることに成功した。得られた触媒はメチルを識別する高い選択触媒作用を示した。また、不斉V錯体の固定化に成功し、2-ナフトールからのバイノール不斉合成に100%選択性、90ee%の高いキラル触媒作用を実現した。
一方、百ミリ秒の時間分解(世界最高の時間分解と解析精度)で表面上に分散した活性構造を測定しその変化を追跡できるDXAFSシステムを開発した。

研究成果

• [文献書誌] M.Tada, Y.Iwasawa: "Approaches to Design of Active Structures by Attaching and Molecular Imprinting of Metal Complexes on Oxide Surfaces"Journal of Molecular Catalysis A : Chemical. 204-205. 27-53 (2003)
• [文献書誌] Y.Namai, K.Fukui, Y.Iwasawa: "Atom-Resolved Noncontact Atomic Force Microscopic Observations of CeO_2(111) Surfaces with Different Oxidation States : Surface Structures and Behavior of Surface Oxygen Atoms"Journal of Physical Chemistry. B107. 11666-11673 (2003)
• [文献書誌] S.Takakusagi, K.Fukui, R.Tero, F.Nariyuki, Y.Iwasawa: "Self-limiting growth of Pt nano-particles from MeCpPtMe_3 adsorbed on TiO_2(110) studies by scanning tunneling microscopy"Physical Review Letters. 91. 066102/1-066102/4 (2003)
• [文献書誌] M.Tada, Y.Iwasawa: "Design of Moleculr-Imprinting Metal-Complex Catalysts"Journal of Molecular Catalysis A : Chemical. 199. 115-137 (2003)
• [文献書誌] A.Suzuki, A.Yamaguchi, T.Chihara, M.Nomura, Y.Iwasawa: "Time Scale and Elementary Steps of CO-Induced Disintegration of Surface Rhodium Clusters"Angew.andte Chemied International Edition. 42. 4795-4799 (2003)
• [文献書誌] M.Tada, T.Sasaki, Y.Iwasawa: "Design of a Novel Molecular-Imprinted Rh-amine Complex on SiO_2 and Its Shape-Selective Catalysis for alpha-Methylstyrene Hydrogenation"Journal of Physical Chemistry. B108. 2918-2930 (2004)
• [文献書誌] 福井賢一, 生井勝康, 岩澤康裕: "非接触原子間力顕微鏡による金属酸化物表面の局所構造とその動的変化の観察"セラミックス. 4 (2003)