本年度は、固体触媒表面上の酸化反応の反応選択性に及ぼす共鳴振動効果を明らかにすることを目的とし、d電子金属であるPd金属の高分散触媒を作製し、エチレンの部分酸化反応に対する活性と反応選択性に及ぼす共鳴振動効果を調べた。強誘電体基板として、自発分極軸方向が表面に対し垂直なニオブ酸リチウム(LiNbO_3)単結晶を用い、その表面にMoを100nmの電極基板として蒸着した後、Pdを0.5〜10nmの薄膜で高分散担持させたPd/Mo触媒を作製した。Pd/Mo触媒上のエチレン酸化反応において、主生成物としてアセトアルデヒドおよび二酸化炭素が生成するが、非共鳴振動状態においては、Pdの膜厚増加とともに、アセトアルデヒド生成の選択性は低下した。Pdの膜厚が5nm以上の厚膜領域では、厚み方向の共鳴振動(TERO)は、アセトアルデヒド生成反応の選択性を低下させるが、3nm以下のPd薄膜領域では、厚み方向の共鳴振動は、逆に二酸化炭素生成を抑制し、アセトアルデヒド生成反応を選択的に促進することを見出した。レーザードップラー法を用いて厚み方向の共鳴振動による表面に垂直な格子変位の大きさを測定し、Pdの膜厚変化に依らず、格子変位量は一定であることを示した。また、原子間力顕微鏡(AFM)像の観察から、Pdの膜厚の減少させることによって、Pdが著しく高分散されることを示した。以上の結果に基づき、Pd厚膜領域では、低指数面が表面を構成するのに対し、薄膜領域では配位不飽和なPdが表面に高密度で存在し、Pdの膜厚を変えた場合に生じる共鳴振動の異なる活性化効果は、これらの微細構造の違いに基づくことを明らかにした。
|