研究概要 |
昨年度は自発分極軸方向が表面に対し垂直なz-カットニオブ酸リチウム(LiNbO_3)強誘電体単結晶表面に蒸着したMo表面に、さらに、Pdを薄膜で高分散担持させたPd/Mo触媒において、エチレンの部分酸化反応に対し共鳴振動効果がPd分散依存性をもつことを明らかにした。本年度は、さらに、酸化反応の選択性に及ぼす共鳴振動効果を確立するため、s電子金属であるCuおよびAg金属触媒について、結晶基板上へのそれぞれの配向金属薄膜、およびCuAg合金薄膜を作製し、エチレンの部分酸化反応に対する活性と反応選択性に及ぼす共鳴振動効果を調べた。強誘電体結晶の両面に、CuあるいはAgを50〜300nmの薄膜で交互に蒸着し二層構造とし、真空下高温加熱した。オージェ電子分光渋およびX線光電子分光法を用いた深さ方向分析において,真空加熱によりCuとAgの均一分布膜が形成していることを示した。AgやCu単独金属触媒では、エチレン酸化反応の繰り返しで活性が,低下し触媒は失活するが,AgCu合金では,顕著な失活は抑制されること、および共鳴振動によって、AgやCu単独金属では、失活した活性の回復はほとんど見られないのに対し、AgCu合金触媒では、活性増加が見られることを見出した。また、Pd/Mo触媒において共鳴振動効果がPd分散依存性を持つ昨年度の結果について、仕事関数の変化に基づき解析した。共鳴振動によって金属の仕事関数は変化するが,その変化の方向は金属の表面構造に依存しており,共鳴振動によって低指数面では仕事関数が増加し,高指数面では逆に減少するCu表面に対する結果に基づき、Pd厚膜領域では、低指数面が表面を構成し、一方薄膜領域では配位不飽和なPdが表面に高密度で存在するため共鳴振動のPd分散依存性が生じる機構が妥当であることを実証した。
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