研究概要 |
本研究では、制御機能を持つ固体触媒を開発することを目的とし、自発分極軸方向が表面に垂直なニオブ酸リチウム(LiNbO_3)単結晶強誘電体基板に金属触媒、高分散金属触媒、および合金触媒を薄膜で接合し、高周波印加により強誘電体基板に発生できる周期性の格子変位である共鳴振動を応用した。強誘電基板を水素処理し、表面層に還元層を析出させた強誘電体単結晶基板を用いたAg触媒上のエタノール分解反応において、共鳴振動によってエチレン生成活性はほとんど変化せず、アセトアルデヒ生成活性が顕著に増加するが、未処理基板を用いたAg触媒の場合には,逆にアセトアルヒド生成活性は変化せず、エチレン生成活性のみが共鳴振動によって増加することを示し、共鳴振動効果は基板の状態に依存することを見出した。Pdを薄膜で高分散担持させたPd/Mo触媒において、エチレンの部分酸化反応に対し共鳴振動が、二酸化炭素生成を抑制し、アセトアルデヒド生成反応を選択的に促進することを示し、共鳴振動が高分散状態で存在する配位不飽和なPdに顕著な効果を与えることを明らかにした。また、エチレンの部分酸化反応に対し、AgCu合金触媒では,顕著な失活は抑制されること、共鳴振動によってAgやCu単独金属では、失活した活性の回復はほとんど見られないのに対し、CuAg合金触媒では活性増加が見られること、さらにCuAgやAuAg合金薄膜において共鳴振動効果が合金組成依存性および共鳴振動周波数依存性を持つことを明らかにした。これらの結果に基づき、共鳴振動による触媒の活性化には、共鳴振動状態で発生する格子変位量とその表面に存在する定在波の密度の両因子が寄与し、低周波での活性化エネルギーの顕著な減少は大きな格子歪みに起因することを明らかにし、制御機能を持つ固体触媒の開発には、共鳴振動効果がきわめて有用であると結論した。
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