研究概要 |
本年度は,主としてき裂の透水性に関する理論的研究を行なった.理論的研究としては,1)実際のき裂を模擬した数値き裂作成法の開発,2)同手法を用いて作成した大規模な数値き裂によるき裂間隙とき裂透水性の寸法効果に関する研究,ならびに3)せん断型き裂の透水性の異方性と不均一性に関する研究を行った.これらに関して得られた主な知見をまとめると以下のようである. 1.数値き裂の作成法に関しては,与えられた間隙と表面高さのパワースペクトル(PSD)の比を再現する逆フーリエ変換に基づく新しいコードを開発し,以前筆者らが測定した寸法が1mの花崗岩の引張き裂の表面高さと間隙のPSDをほぼ再現することで本方法の有効性を検証した. 2.最大12.8mの大規模き裂を用いた間隙と透水性の寸法効果に関する研究では,せん断変位がない場合には,き裂寸法が0.2mを越えると間隙の標準偏差が寸法に依存しなくなる結果,き裂透水性も寸法に依存しなくなることを明らかにし,き裂寸法と間隙の標準偏差に依存しない実験式を提案した.また,き裂に50mmまでのせん断変位を与えて閉鎖させたせん断き裂についても,間隙の標準偏差はせん断変位とともに著しく増加するものの,せん断変位がき裂寸法の約3.1%以下では,間隙の標準偏差がき裂寸法に依存しなくなる結果,き裂透水性にも寸法効果がなくなることを明らかにした. 3.最大6.4mまでのせん断き裂の透水性に関する研究では,き裂透水性に著しい異方性が現れることを明らかにし,この異方性は,せん断変位の増加とともに,またき裂の閉鎖とともに大きくなること,また,この異方性は,せん断変位と平行な方向と垂直な方向のPSDに差が生ずるためであることを明らかにした.さらに,せん断変位に伴ってチャンネルフロー領域の大きさが増加しかつその領域数が減少する結果,せん断変位とともに水の流れの局所化が進行することを明らかにした.
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