研究概要 |
本研究では,真三軸圧縮応力下におけるき裂の透水性に関する実験的研究とともにコンピュータ上に作成した大規模な数値き裂を用いたき裂間隙とき裂透水性に関する理論的研究を行った. 実験的研究により得られた結果をまとめると次の通りである. 1.本研究で開発した実験装置は,0.3MPa以下の間隙水圧で約50mmまでのせん断変形に対し,き裂面に作用する垂直応力が一様な条件で透水性の不均一性を評価できる. 2.人工き裂に対するせん断-透水実験から,透水量が7.5〜11.5%の範囲でばらつくこと,垂直応力とせん断応力の増加に伴い水理学的間隙が徐々に減少することが明らかになった. 3.引張き裂に対するせん断-透水実験から,間隙水圧が0.3MPaまでの透水特性を評価できたが,き裂内に残存した空気の影響のため,十分な知見を得ることは今後の課題となった. 理論的研究から得られた主な知見をまとめると以下のようである. 1.与えられた間隙と表面高さのパワースペクトル(PSD)の比を再現する逆フーリエ変換に基づく新しい数値き裂作成コードを開発し,寸法が1mの花崗岩の引張き裂の表面高さと間隙のPSDをほぼ再現することを検証した. 2.せん断変位がない場合には,き裂寸法が0.2mを越えると間隙の標準偏差が寸法に依存しなくなる結果,き裂透水性も寸法に依存しなくなることを明らかにし,き裂寸法と間隙の標準偏差に依存しない実験式を提案した.また,き裂に50mmまでのせん断変位を与えて閉鎖させたせん断き裂についても,せん断変位がき裂寸法の約3.1%以下では,間隙の標準偏差がき裂寸法に依存しなくなる結果,き裂透水性にも寸法効果がなくなることを明らかにした. 3.最大6.4mまでのせん断き裂の透水性に関する研究では,き裂透水性に著しい異方性が現れることを明らかにし,この異方性が.せん断変位の増加とともに,またき裂の閉鎖とともに大きくなること,また,この異方性は,せん断変位と平行な方向と垂直な方向のPSDに差が生ずるためであることを明らかにした.さらに,せん断変位に伴ってチャンネルフロー領域の大きさが増加しかつその領域数が減少する結果,せん断変位とともに水の流れの局所化が進行することを明らかにした.
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