研究概要 |
本研究の背景として、PVCのメカノケミカル(MC)法による脱塩素処理プロセスを確立するため、CaOを主な脱塩素剤としてPVCとの固相反応機構を解明し、同時に処理産物のマテリアル・リサイクルあるいはケミカル・リサイクルの可能性を追求した経緯がある。この検討では、CaOの代わりにZnO、CoOなども同様の役割を果たすことが確認できたが、これが、本研究を提案する契機である。すなわち、廃棄物中にCoOなどが含まれている場合、PVCとMC処理した場合、PVCの脱塩素と共に、Co等の金属は塩化物となり、水洗によって回収可能になるからである。 本年度は、廃棄物として、リチウムイオン電池の正極剤(LiCoO_2)と水素吸蔵合金(MmNi_5、Mm=La等の希土類金属)を対象に、含有する有価金属の回収を目標としたプロセス開発研究を実施した。すなわち、まず、小型遊星ボールミルを使用し、PVCと廃棄物との混合試料をMC処理したが、そのときの条件は、容量48mlのステンレススチール製のミルポットに,混合試料3.0gを入れ,直径15.9mmのスチールボール7個を充填し,ミル回転速度700rpmである。また、処理産物の構成相を分析・評価し、塩化物の生成を確認した。更に、処理産物を常温で水洗・ろ過し、ろ液と固体残渣に分離し、それぞれの化学組成を分析・定量し、回収率を求めた。 その結果、まず、PVC-LiCoO_2系においては、LiとCoがLiClとCoCl_2となる割合でPVCを添加した場合、LiとCoの塩化物が生成し、水洗のみでLiとCoの回収が可能で、36時間でLiが約100%、Coが約90%回収できることが確認できた。また、PVC-MmNi_5系では、それぞれの金属の塩化物が生成し、水洗のみでこれらの回収が可能であることを確認した。この場合、Ni、Co、Mnが二塩化物、希土類金属、Alが三塩化物となるようにPVCを添加してMC処理すると、36時間でNiとCoは約90%、Mnと希土類は100%近く回収できた。なお、PVCの混合割合を変化させると、希土類金属と遷移金属類の分離が可能であり、有価金属の選択的回収も期待できることを示した。以上、初年度の目的が達成でき、新規有価金属回収プロセスの開発の可能性並びにその発展性が示された。
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