研究概要 |
新しい有価金属の回収法として,メカノケミカル(MC)法を提案する.この方法は粉砕処理と抽出処理を組み合わせたものであり,熱を使わないこと、抽出は水であることから"環境に優しいプロセス"であるのが特長である. 平成15年度は、廃棄物として、リチウムイオン電池の正極剤(LiCoO_2)と水素吸蔵合金(MmNi_5、Mm=La等の希土類金属)を対象に、PVCとの混合粉砕処理後水洗とろ過によりメタル回収プロセスの開発研究を実施した。 平成16年度は、遷移金属硫化物モデル試料と酸化カルシウムとのMC処理の効果と産物の各種溶媒による抽出率を調べた.その結果,MC処理により硫化モリブデンからモリブデン酸カルシウムが,硫化バナジウムからバナジン酸カルシウムがそれぞれ合成され、有価金属の回収率が向上することが判明した。 平成17年度は、酸化カルシウムの代わりに、二酸化マンガンなどを使用すると,モリブデンやバナジウムが高い収率で回収できることが判明した。すなわち硫化物を酸化させるためには、酸化剤が必要であり,その酸化剤としては,酸化カルシウムより二酸化マンガンの方が酸化力が高い。また、マンガン酸化物はモリブデン酸と不溶性化合物を作らないので有利である。この方法によりモリブデンとバナジウムが90%以上回収できた。 一方、貴金属触媒からの貴金属の環境適合型回収法も強く望まれている。基礎研究として、貴金属含有試料と硫酸アモンニウムとのMC処理を行い、貴金属の中パラジウムが水に可溶な化合物となり、王水ではなく、水洗だけでパラジウムが回収できることがわかった。 以上、本研究では、科研費給付期間に、幾つかの廃棄物を対象として、含まれる有価金属を簡単に、環境にやさしいプロセスで回収する手法開発を目指し、その結果、粉砕操作(MC処理)と水洗いう簡単な操作を組み合わせた21世紀型処理プロセスを開発することに成功した。今後は、共同研究相手先企業と連携し、その実用化へ向けた更なる研究推進を行う予定である。
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