高いエネルギー効率をもつウラン・レドックスフロー電池の研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15206111
• 研究種目: 基盤研究(A)
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 塩川 佳伸 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (50111307)
• 研究分担者: 山村 朝雄 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (20281983) ; 李 徳新 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (40281985)
• キーワード: レドックスフロー電池 / ウラン廃棄物 / 劣化ウランの有効利用 / 電力貯蔵 / 自然エネルギー利用

研究概要

電力中央研究所の内山洋司博士によれば、21世紀中葉には現在の主要なエネルギー源である石油や天然ガス資源の採掘は困難となり、石炭・合成燃料・原子力・自然エネルギー等に依存する時代が到来する。この中で自然エネルギーは事実上枯渇がなく、今後重要な位置を占めると予想される。しかし、自然エネルギーによる発電は出力の変動を伴い、電力の安定供給にはその出力の平滑化が必要となる。レドックスフロー電池はこの方策を担う電力貯蔵用電池の1つであり、常温で作動し、構造が単純で長寿命、電池反応はイオン間の反応であるため充放電に伴う固相の析出はない等の優れた特徴を有している。我が国でも、バナジウム・レドックスフロー電池が2年前より実用化されているが、その正極と負極の反応は、イオンの構造変化等を伴うため速いとは言えず、そのエネルギー効率は良好とは言い難い。一方、ウランのIII価からVI価までのイオンはU^<3+>,U^<4+>,UO_2^+,UO_2^<2+>であり、ウランは2組の等構造イオン対(U^<3+>/U^<4+>とUO_2^+/UO_2^<2+>)を有している。等構造のイオン対の反応は活性化エネルギーが低く、これら2組のイオン対の酸化還元反応が速いことは古くから知られている。他方、アクチニド以外の元素がもつ等構造のイオン対は高々1組であり、ウラン等のアクチニドが2組の速い酸化還元対を有することは特異な性質であり、これを電池活物質として利用ことによって、エネルギー効率の優れた電力貯蔵用電池が期待できる。更に、原子力発電に伴い派生した劣化ウランは現在120万トンに達し、このウラン廃棄物の有効利用は資源活用の点から重要である。
本研究では、ウランのVI価とIV価のテトラケトン錯体を新たに創製し、これを電池活物質としてウラン電池を実現し、その充放電特性を得て、非プロトン性溶媒中でウラン・レドックスフロー電池を実証した。しかし、問題点として、これらのテトラケトン錯体の溶解度が小さいこと、電池隔膜として用いたイオン交換膜が本来水溶液系を対象としているため非プロトン性溶媒中では必ずしもその機能が発揮されないため過電圧が高くなる等の問題点が明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] K.Hasegawa, Y.Sano, A.Aoshima, Y.Shiokawa: "Preparation of lanthanum and cerium metals by hydrometallurgy"J.Alloys Compd.. 352. 246-249 (2003)
• [文献書誌] A.V.Andreev, Y.Homma, Y.Shiokawa: "Sublattice contributions to magnetic anisotropy of U_2(Fe, Si)_<17> single crystals"J.Mag.Mag.Mat.. 258-259. 500-503 (2003)
• [文献書誌] A.V.Andreev, V.Sechovsky, K.Prokes, Y.Homma, O.Syshchenko, J.Sebek, M.I.Baratashevich, T.Goto, Y.Shiokawa, K.Jurek: "Magnetisim in a UNi_<2/3>Rh_<1/3>Al single crystal"Phil.Mag. 83. 1613-1630 (2003)
• [文献書誌] D.X.Li, Y.Shiokawa: "Metastable magnetic behavior in UFe_4A_<18>"J.Phys. : Condens.Matter. 15. 2029-2033 (2003)
• [文献書誌] A.V.Andreev, D.Rafaja, J.Kamarad, Z.Arnold, Y.Homma, Y.Shiokawa: "Magnetic properties of Lu_2Fe_<17> crystals"J.Alloys Compd. 361. 48-53 (2003)
• [文献書誌] D.X.Li, S.Nimori, Y.Shiokawa, Y.Haga, E.Yamamoto, Y.Onuki: "ac susceptibility and magnetic relaxation of R_2PdSi_3(R=Nd, Tb and Dy)"Phys.Rev.. B68. 012413 (2003)