研究課題
単細胞微細藻類のミドリムシは光合成に適した光環境に集まったり、強すぎる光から逃避する性質がある。我々はこのような反応を司る光センサーの実体として、青色光で活性化されるアデニル酸シクラーゼを発見している(Iseki et al.2002,Nature 415,1047-1051)。アデニル酸シクラーゼは、多くの生物の細胞内情報伝達系において重要な役割を果たす環状アデノシン一リン酸(cAMP)を産生する酵素であるが、このような、自身が光センサーとして機能するアデニル酸シクラーゼは従来全く知られておらず、極めてユニークな分子と言ってよい。我々はこれを光活性化アデニル酸シクラーゼ(PAC)と名付けている。〔PACの進化的由来〕では、ミドリムシはこのユニークな光センサーをどのように獲得してきたのだろうか?我々は、数種類のミドリムシ近縁生物からPAC類似タンパク質をコードするcDNAを検出し、得られた配列のアデニル酸シクラーゼ触媒領域について系統解析を行った。その結果、PACは二次共生による葉緑体獲得時あるいはそれ以降に出現したものと推測された(Koumura et al.2004,Photochem.Photobiol.Sci.3,580-586)。〔PACの光活性化〕また、我々は、PACの光活性化の基本的な性質を明らかにするため、精製したPACのアデニル酸シクラーゼ活性に及ぼす光の効果を詳細に調べ、PACは光量依存的に活性化されること、PACの活性変化は数十ミリ秒オーダーのパルス光刺激に追従可能であること、等を明らかにした。これらの性質はミドリムシの光応答現象を説明するに足るものであり、また、将来、細胞工学的応用を考えるうえでの重要な基礎データでもある(Yoshikawa et al.2005,Photochem.Phobobiol.Sci. in press)。
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Photochem.Photobiol.Sci 4(in press)
J.Biochem (In press)
Photochem.Photobiol.Sci. 3
ページ: 580-586
遺伝 58・6
ページ: 36-41
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