研究概要 |
ミトコンドリアへのタンパク質移行は外膜と内膜の複数の膜透過装置(トランスロケータ)によって担われる。ミトコンドリアタンパク質の多くは,外膜のTOM40複合体を通過した後,外膜,膜間部,内膜,マトリクスの各区画に移行する。この移行経路の分岐を制御するシグナルと認識システムを理解するために,われわれは内膜の複数回膜貫通タンパク質PiC(リン酸キャリア)の各種欠失変異体を作成し,ミトコンドリアへの移行経路を調べた。野生型PiCは,TOM複合体通過後,内膜のTIM22複合体に移行し,TIM22複合体によって内膜に組み込まれると考えられている。しかしPiCの欠失変異体の中にはTIM22経路ではなく,TIM23経路によりマトリクスにまでミスソートされるものがあった。このことは,PiCはTIM23経路に仕分けられるcrypticなシグナルを有することを示しており,TIM22経路とTIM23経路の間の仕分け機構が従来考えられていたより複雑であることを示している。 外膜から膜間部への移行経路にはTOM40複合体のみが関わると考えられていたが,われわれはこの経路に関わる新規内膜タンパク質Tim40を発見した。Tim40は膜間部にドメインを持つ内膜の内在性タンパク質で,膜間部のsmall Tim等,可溶性低分子量タンパク質の局在化に関わる。また最近,βバレルタンパク質は外膜のTOM40複合体とSAM/TOB複合体を介して外膜に組み込まれることがわかってきた。われわれは,この経路に関わる新規外膜タンパク質Tom38とTom13を発見した。Tom38は既知のトランスロケータSAM/TOB複合体の新因子として,βバレル型タンパク質の外膜へのアセンブリーに関わる。Tom13は既知のトランスロケータとは別の複合体を作り,βバレルタンパク質の一部のヘテロ複合体アセンブリーに関わる。
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