研究概要 |
出芽酵母の染色体DNA複製開始に関わる因子の集合に関して以下のような結果を得た。 1,これまでdpb11-1変異と合成致死になる変異としてsld変異を分離した。これらの変異を相補する遺伝子が新規の複製開始因子をコードするものが多かった。しかし、合成致死になることが他の研究から明らかになっているにも関わらず、分離されていない遺伝子の変異もあった。そこで、既に分離していた新たなdpb11変異を用いてsld変異のスクリーニングを再度行った。先のスクリーニングでは分離されなかった既知のMCM3,MCM10遺伝子に加えて、新規の遺伝子の変異を1つ分離できたが、この新規の遺伝子は細胞増殖には必須ではなく、DNA複製に関与しているものでは無かった。 2,複製開始に関与するSld3,GINSの大腸菌および昆虫細胞からの発現系を確立した。ここで発現したものを、今後精製し解析に用いる予定である。Dpb11,Sld2についても、両者の結合に必要な領域を限定し、その領域を大腸菌で発現し精製する系を確立した。精製したタンパク質のみで、両者の結合がCDKによるリン酸化に依存して制御されていることが分かった。 3,2-ハイブリッド法と遺伝学的手法を組み合わせることにより、Sld3のN末がCdc45とC末がGINSのサブユニットであるPsf1と相互作用することが明らかになった。 4,Sld2には11個のCDKリン酸化部位(SP/TP)が存在するが、その全ての部位をリン酸化型に近いDPに変えた変異を作成した。この変異株は増殖でき、複製開始にはCDK活性が必要である。従って、複製の開始にはSld2に加えて、他の因子のCDKによるリン酸化が必要であると結論できる。
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