真核生物の複製開始領域には、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)活性の低いM期後期からG1期にpre-Replicative Complex(pre-RC)が形成し、CDK活性がG1期後期に増加すると多数の複製タンパク質がpre-RCに集合して、複製が開始する。この集合に関して本年度は以下の点を明らかにした。 1.CDK活性に依存して形成されるpre-Landing Complex(pre-LC)を同定している。pre-LCはDNAポリメラーゼε(Polε)、GINS、Sld2、Dpb11を含む。これらのタンパク質を、酵母、バキュロウィルス発現系を用いた昆虫細胞より精製した。精製したタンパク質間の結合を調べると、4因子全てがお互いに結合することが分かった。さらに全てを混ぜ合わせると、複合体を形成することを示唆する結果を得た。 2.複製開始には、2つの複製因子Sld2とSld3がCDKによりリン酸化され、もう一つの複製因子Dpb11に結合することが必須であり、この両結合をバイパスするとCDK活性無しで複製が開始することを示した。Dpb11は、2対のBRCTドメインを持つ。タンデムに並んだ2つのBRCTドメインは、リン酸化ペプチド結合ドメインと考えられている。リン酸化されたSld2はC末側の一対のBRCTドメインに、リン酸化されたSld3はN末側の1対のBRCTドメインに結合する。我々が分離したJET1変異は、Sld3と結合するCdc45の優性変異で、Sld3のリン酸化をバイパスする。
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