細胞質分裂をになう収縮環はミオシンとアクチンから構成され、この2つの成分の相互作用により収縮する。これまでに、ミオシンはアクチンと独立に分裂位置に集まってくることをカエル卵と分裂酵母で明らかにしてきた。本年度は分裂酵母のミオシンが分裂位置に集まる機構を研究し、次のことを明らかにした。これはミオシンが分裂位置に集まる機構についての初めての報告である。 1.ミオシンのC末端134残基の部分が集合に必要十分である。この部分はミオシンのATPase活性、アクチンとの相互作用と関係なく集合に必要である。 2.この部分に含まれるSer1444は間期にはリン酸化されており分裂期に脱リン酸化される。この脱リン酸化が集合に必須である。脱リン酸化をミミックした変異ミオシンは分裂期以前に分裂位置に集まってしまうことが分かった。 3.C末端134残基はMid1と結合することが分かった。このことから、Mid1が分裂期に先立って核から放出され、分裂位置の細胞膜直下に蓄積し、これに脱リン酸化されたミオシンがターゲットすることにより分裂位置に集まることが示唆された。 また、分裂酵母のアクチン繊維を加圧凍結法により作製した試料で電顕観察することができるようになった。さらにミオシンS1により修飾し、その方向性を明らかにできることが分かった。これらの方法により、これまでF-アクチンパッチと呼ばれてきたものが短いアクチン繊維の糸まり状の構造であること、F-アクチンケーブルと呼ばれてきたものがアクチン繊維の束であることが明らかになった。
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