研究概要 |
研究代表者らは、先に12種の新規PEX(peroxin)遺伝子の単離に成功している。そのうちPEX1,PEX2,PEX3,PEX5,PEX6,PEX7,PEX12,PEX13,PEX14およびPEX19はCHO(Chinese hamster ovary)変異細胞を用いた主として機能相補性活性スクリーニング法により、またPEX10,PEX16はEST法による酵母遺伝子のヒトホモログとして単離したものである。これらの遺伝子は、PEX14以外はすべて病因遺伝子であることも明らかにされた。 本課題研究では、ペルオキシソーム形成機構やその障害機構の全貌の解明を目指した。 研究遂行の結果、以下の独創的成果を得ることができた。 1)CHO変異細胞ZPG167に対し新規遺伝子PEX26のクローニングに成功した。Pex26pはAAA ATPaseファミリーペルオキシンPex1p-Pex6p複合体をペルオキシソーム膜へリクルートすることが判明した。PEX26は相補性群A群(欧米8群)のペルオキシソーム形成異常症の病因遺伝子であることも明らかにした。これで、12種相補性群のペルオキシソーム形成異常症のすべてに病因遺伝子が解明されたことになる。我々がCHO変異細胞を用いた手法により世界で初めてペルオキシソーム形成因子(PAF-1,統一名PEX2)を単離、Zellweger症候群の最初の病因遺伝子を解明(Science,1992)してから10年余、これらの研究推進により12相補性群全ての病因遺伝子の同定・クローニングに成功した。これだけ多くの病因遺伝子が10年という短期間に明らかにされた例は他にはなく、特筆すべき成果として高く評価されている。 2)PTS1受容体Pex5pのペルオキシソーム-サイトゾル間シャトリングの分子機構 無細胞輸送系を確立し検討した結果、Pex5pはペルオキシソームへの移入にはPex14pと温度を必要とし、移出にはAAA-ATPase Pex1pおよびPex6p、ATP加水分解ならびにサイトゾルを必要とすることを解明した。 3)Pex14pの機能領域21-260の同定と共に、マトリックスタンパク質輸送装置因子としての分子動態を明らかにした。 4)膜形成ペルオキシンPex19pは新規合成膜タンパク質と細胞質中で複合体を形成、安定化し、次いで経時的に膜形成に依存して輸送、局在化させることを明らかにした。 5)Pex1pとPex6pの分子解剖とPex1p、Pex6pそれぞれの活性領域、さらにはPex26pとの3者複合体形成能とその生理的意義を明らかにした。 6)PTS2受容体Pex7pによるマトリクスPTS2タンパク質の輸送機構を明らかにした。 7)ペルオキシソーム形態異常CHO変異細胞ZP121は、ダイナミン様タンパク質遺伝子DLP1障害を有する世界で初めての哺乳動物dlp1変異細胞であることを見出した。さらに、DLP1の膜上レセプターであるFis1もペルオキシソーム膜上に存在し、この両者にペルオキシソームの分裂に必須なPex11pを加えた3者の協奏的作用により、ペルオキシソームの分裂と形態が制御されていることを最近見出した。
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