研究課題/領域番号 |
15207015
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
梅田 真郷 京都大学, 化学研究所, 教授 (10185069)
|
研究分担者 |
竹内 研一 京都大学, 化学研究所, 助手 (70270684)
加藤 詩子 京都大学, 化学研究所, 助手 (90362392)
稲留 弘乃 京都大学, 化学研究所, 教務職員 (30378872)
兼田 瑞穂 東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 主任研究員 (50113494)
山本 正雅 東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 主任研究員 (50150884)
|
キーワード | 生体膜 / リン脂質 / ショウジョウバエ / 細胞骨格 / 形態形成 |
研究概要 |
我々は、酵母におけるリン脂質非対称分布に異常を来した変異株の樹立とその原因遺伝子の解析から、膜リン脂質のフリップ・フロップを制御する新たな蛋白質ROS3を同定した。ROS3蛋白質は酵母から哺乳動物まで幅広い生物で保存されており、細胞機能発現において普遍的な役割を果たしていることが示唆された。昨年度までに、ショウジョウバエにおけるROS3相同分子の発現抑制個体を作製し、個体発生における役割を解析した結果、細胞の極性形成ならびに細胞サイズの制御に重要な役割を果たしていることを見出した。 本年度、その分子メカニズムを明らかにすべく、哺乳動物培養細胞を用いてその機能解析をさらに進めた。その結果、培養細胞においてもROS3過剰発現により細胞サイズの著しい増加が観察され、ROS3の発現抑制により細胞の形態異常が認められた。これらの知見は、ショウジョウバエ個体で観察された現象が、哺乳動物培養細胞においても再現されることを示している。さらに、ROS3の過剰発現およびRNAiによる発現抑制した細胞株群を褂立し、その機能解析を進めた。その結果、ROS3はリン脂質輸送分子P型ArPaseと相互作用し、形質膜におけるリン脂質のフリップ・フロップ運動の制御することを明らかにした。また、ROS3過剰発現細胞では細胞面積が大きくなり活発に移動を行う様子が観察されたことから、トランスウェルアッセイによりROS3の細胞運動に及ぼす影響を詳細に検討した。その結果、ROS3はP型ATPaseならびに小分子量Gタンパク質Arf6と細胞の伸展部位に形成されるラッフル膜に局在し、局所的な膜リン脂質フリップ・フロップの調節を介して、Arf6などの小分子量G蛋白質の活性化を制御していることを明らかにした。これらの研究結果は、膜局所における脂質分子のフリップ・プロップの変化が、アクチン骨格の再編および形質膜への小胞輸送を制御し、細胞運動ならびにサイズ制御において重要な役割を果たすことを示す最初に知見となった。
|