研究課題
補体系の中心成分であるC3、及び同族に属しながらプロテアーゼインヒビターとして働くa2Mの進化的な起源を追求して、刺胞動物のタテジマイソギンチャクには両者が存在し、発現部位を異にすることを明らかにした。この結果、両者間の遺伝子重複も、その後の機能分化も刺胞動物の出現以前に完了していたことが示唆された。一方、前口動物の、ツノヒラムシ、オトヒメゴカイ、ホシムシ、アオウミウシなどを調べたところ、a2Mのみが検出されC3は検出されなかった。これまでにC3の存在が報告されている前口動物はカブトガニのみで、解析の終了したセンチュウ、ショウジョウバエのゲノム中にもC3遺伝子は見いだされないことから、前口動物の多くの系統においてC3遺伝子の二次的な消失が起こっていると考えられた。後口動物では尾索動物の補体系の解析を、マボヤ、カタユウレイボヤをもちいて発展させ、膜傷害に関わる可能性のある補体後期成分と思われるマボヤ遺伝子を組み換えタンパクとして昆虫細胞に発現させ、ウサギに免疫して抗体を作成した。この抗体をもちいて、当該成分をマボヤ体腔液より精製することに成功した。以上の結果より、補体系はC3およびごく少数の成分からなる生体反応系として、10億年以上前に出現し、その後、後口動物で系統で多くの遺伝子をリクルートすることにより、多成分からなる多機能な生体防御システムとして確立したと思われる。さらに昨年度までの成果をあわせると、脊椎動物の系統で独自の発展を遂げ、今日哺乳類に見られるような高度に組織化された反応系として完成したと思われる。
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