研究課題
基盤研究(A)
本研究では、実験進化の特徴である再現性を生かして、安定な共生系を複数系列で作り出す。そして、共生系安定化の複数プロセスを解析することによって、偶然の変化を排除し、共生系発達の基本的条件を明らかにすることを目的とした。具体的には、我々の実験室で見つかった2つの人工共生系を解析する。1つは細胞性粘菌と大腸菌が共存する粘性コロニーである。もうひとつの共生系は、光合成細菌が鞭毛虫であるテトラヒメナへ細胞内共生する系である。細胞性粘菌と大腸菌との共生系に関して、以下のような知見が得られた。貧栄養固体培地上で両菌を共培養すると、コロニーの形態が順次変化し、粘性コロニーへと移行してゆく。その過程における細胞性粘菌と大腸菌の形態や個体数を、セルソータなどを用いて観察した。その結果、両者を単独で培養した場合とは異なる、特徴的な個体群動態が見られた。また、細胞性粘菌との共生系の発達の初期段階の大腸菌の変化を明らかにした。これらの結果、共生状態への移行途中において大腸菌は細胞性粘菌との相互作用により多様な生理状態をとるようになり、その結果、細胞性粘菌との共生状態に移行できたのではないかと考えている。テトラヒメナとシノアバクテリアの共生系に関しては、両者が共に安定した成育を示す培養条件を確立しなければならない。そのために、アミノ酸、ビタミン、ヌクレオチド、グルコースなどの培地成分の種類と濃度を種々変化させ、共者がゆっくりではあるが増殖しうる条件を絞り込んだ。また、テトラヒメナと大腸菌を用いた新たな細胞内共生系を構築するために、両者の共培養の条件検討も行った。
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