研究概要 |
本年度は試験的実験研究と関連資料の収集に努めた。 生理的多型性を検討するための予備的研究としては,光の照度,色温度を変えた光環境下で味覚閾値,唾液量を日本人と中国人で比較検討した。日本人,中国人共に低照度環境で唾液量は増加し,中国人は日本人よりも低色温度で唾液量の増加するタイプの多いことが認められた。日本人では低照度で甘味と苦味の闇値は高くなるタイプが,高色温度で閾値が低くなるタイプが優勢であった。中国人では低照度で甘味と苦味の閥値が高くなるタイプと,低色温度で甘味の閥値が高くなるタイプの多いことが検出された。 機能的潜在性としての直立耐性に関する生理的多型性を血圧調節反射との関連から調べるため、tilting bedを用い体位変換時の循環器動態を測定した。個人内変動を特定するため、各被験者毎に複数回の測定を行った。末梢血管抵抗の推定には、心拍出量と平均血圧のデータから算出し、圧受容体反射感受性の多型性と潜在性は心拍と血圧の変動から推定を行っている。季節差に関する考察も加えて統合的に考察する予定である。 生理的多型性の観点から脳機能計測の絶対値測定を可能にする測定法の確立を目指した。100億分の1秒程度の光を用い、光路長を実測し、前頭前野を中心とした脳血液動態の絶対値計測を実施した。現状では種々の問題点が存在するものの、センサー間の距離を変化させることにより、絶対値計測に検討を加えた。一方、熱可塑性プラスチックを用いてセンサー位置を固定することにより、各人の時間的な変動は計測することが可能であることが示唆され、測定法の開発は可能であると考えている。 環境適応能における生理的多型性と機能的潜在性の解析にかかわるさまざまなデータを比較検討し、本研究遂行の資料としつつある。
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