研究概要 |
環境適応の生理的多型を生じるメカニズムは多様であり、各生理機能間の協関の内容と共に、各機能の顕在化の程度が、複雑多様な生理的多型性を表出していることが次第に明になりつつある。 生理的多型性の人種比較の一環として、日本人と中国人の味覚閾値に対する光の照度,色温度の影響についてさらに検討した。日本人では甘味と苦味は照度が低いと認知閾値は高くなり,苦味は色温度が低いと閾値は高くなるタイプの出現頻度が高い。中国人では甘味は色温度が低いと甘み閾値が高くなるタイプの出現頻度が高い。この他,中国人は塩味閾値の高いタイプの出現頻度が日本人より高い。光刺激に対する生理的多型性をより詳細に検討するために単波長光に対する脳波α波帯域率,血圧,瞳孔径を指標に解析を続けている。 機能的潜在性としての心臓脈管系動態の直立耐性に関する生理的多型性を血圧調節反射との関連から調べるため、運動処方前後でtilting bedを用い暑熱下での体位変換時の循環系諸測度を求めている。運動処方は60%最大酸素摂取量強度の自転車エルゴメータを30分・週3回・3ヶ月間である。運動処方による交叉適応としての暑熱時の血管拡張反応の亢進による耐暑性の向上と直立耐性の関連を調べる。現在、運動処方前の測定が完了し、運動処方後の実験を開始している。 機能的潜在性ならびに生理的多型性研究において、高次神経機能の絶対値計測は重要な知見をもたらす。本年度は、1)近赤外分光法による時間分解計測法を用いた多点(10ch)血液濃度絶対値計測を確立した。その結果、前頭前野10カ所(左右5chずつ)における部位ごとの血液濃度に差異があり活動が異なっていることが明らかとなった。さらに、大型スクリーン(6.3×3.4m)を用いて森林風景の視覚刺激を行ったところ、前頭前野10カ所の部位ごとに異なる応答を示し、活動の局在性が認められた。2)近赤外時間分解分光法とfMRIの同時計測システムを確立し、さらに視覚刺激実験を実施することによって本システムの有用性を確認した。
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