研究概要 |
【ミトコンドリア分裂因子の同定】 すでに同定していたミトコンドリア分裂因子DRP3b以外に,DRP3aもミトコンドリアの分裂に関与していることを明らかにした.DRP3aは,ペルオキシソームの分裂にも関与していることが知られているが,新たにミトコンドリア分裂にも機能していることが分かった。また,酵母のミトコンドリア分裂因子Fis1の配列をもとに,シロイヌナズナの全ゲノム中より2つのFis1ホモログを同定し,それぞれAtFIS1a,AtFIS1bと命名した.AtFIS1aは,そのC末端側の疎水領域により植物のミトコンドリア外膜に局在することが分かった.さらに,このタンパク質がペルオキシソームと葉緑体にも局在することが分かった. 【ミトコンドリア形質転換】 同定したミトコンドリア分裂因子DRP3Bの優性変異遺伝子を高発現するような形質転換植物体を作製したところ,細胞内でミトコンドリアが変形し巨大化した.この形質転換体を標的としてパーティクルボンバードメント法によりミトコンドリアの形質転換を試みたが,目的の形質転換体は得られなかった. 【高等植物におけるミトコンドリア融合現象の発見】 研究の過程でミトコンドリア分裂抑制による形態の変化が,細胞分裂に伴うことなく予想以上に速やかに長大化することがわかってきた.この結果は,植物ミトコンドリアが頻繁に融合していることを示唆していた.そこで,新規蛍光タンパク質Kaedeを利用して,以下の実験をおこなった.Kaedeは,緑色蛍光をもつタンパク質でありながら,紫外線を当てると赤色に変わる性質がある.1個の細胞内のミトコンドリアの一部を緑色に,また一部を赤色に蛍光ラベルし,啓示的に細胞を観察したところ,赤と緑のミトコンドリアが融合して黄色(赤+緑)に変色する様子(融合する様子)を動画でとらえることに成功した,2時間以内に細胞内のすべてのミトコンドリアが少なくとも1回は融合することが確認され,植物細胞内で頻繁にミトコンドリアが融合していることを初めて明らかにした.
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