大腸菌は、内膜または外膜のペリプラズム側にアンカーした90種以上のリポ蛋白質を持っている。+2位にAspを持つリポ蛋白質のみが内膜に局在する。外膜特異的リポ蛋白質は、Lolシステムの作用で内膜から遊離し外膜に運ばれる。LolCDE複合体が外膜特異的リポ蛋白質を認識して内膜から遊離する機構を詳細に解析し、リポ蛋白質とLolCDEの結合がATPの結合に先立つこと、ATPが結合するとLolCDEとリポ蛋白質の親和性が低下することを明らかにした。親和性の低下には、ATPの分解は必要でなく、結合エネルギーのみで低下することを明らかにした。LolCDEを脂質の種類を変えたプロテオリポソームに再構成し、選別に脂質が及ぼす影響を明らかにした。ATPaseサブユニットLolDの変異を抑制する膜サブユニットLolE、LolCの変異体を多数分離した。これらは、因子間の相互作用様式を解明するのに有用である。リポ蛋白質特異的分子シャペロンであるLolAの変異体を多数構築し、リポ蛋白質の結合と、LolBへの受け渡しには、LolAに存在する疎水性キャビティーの蓋の開閉だけでなく、リポ蛋白質結合部位の疎水性度が決定的に重要であることを明らかにした。また、LolB変異体の解析により、LolAからリポ蛋白質を受け取れない変異体、外膜に組み込めない変異体など、これまでに解析されていないLolBが関与する反応の分子機構を詳細に解明するために有用な実験系が確立できた。さらに、外膜リポ蛋白質であるLolBの外膜へのアンカーは機能に必須ではないことを利用し、効率よく多数の変異体を分離できる実験系を確立した。
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