研究概要 |
昨年度に引き続き、動物細胞からのアセチル化タンパク質の同定と機能解析を行った。まず、近年報告のあった分子シャペロンHsp90のアセチル化について解析し、主なHsp90の脱アセチル化酵素がHDAC6であること、Hsp90はアセチル化によって機能が低下し、グルココルチコイドホルモン受容体の活性化と核移行が抑制されることがわかった。また、NAD依存的な脱アセチル化酵素であるSIRTによって脱アセチル化されるタンパク質も併せて取得するため、COS7細胞に亜鉛依存的なHDACを阻害するトリコスタチンA(TSA)とともにSIRT活性を抑制するニコチンアミドを同時に処理することで検出される新たなアセチル化タンパク質の解析を行った。その結果、いくつかの新規アセチルかタンパク質を同定した。その中でもCFIm25とポリAポリメラーゼ(PAP)はともに転写の終結に関わる因子であった。CFIm25はmRNAの3'側の予定切断部位に結合し、ポリA合成酵素であるPAPをリクルートすると考えられ、両者は長いポリA鎖の合成に関与する。その際、両者のアセチル化はCFIm25とPAPの結合低下をもたらした。両者のアセチル化酵素はともにCBPであり、脱アセチル化酵素はいずれもHDAC1,3,10およびSIRT1,2であった。すなわち、この転写終結複合体は、転写進行に伴って転写活性を正に制御するCBPによってアセチル化され、その結果解離し、mRNAの切断部位が露出することにより、PAPによるポリA付加を促進していることが示唆される。これは転写開始だけでなく、転写終結にもアセチル化が関与することを示す初めての発見である。さらに分裂酵母のSIRTであるHst2を破壊した株では、eIF5Aが特異的にアセチル化されることを見いだした。このことは、翻訳にもアセチル化が関与することを示唆する。
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