研究概要 |
魚群探知機と比べて探査範囲が格段に広いスキャニングソナーを用いて,魚群の形状,体積,密度等の定量解析が可能な次世代型計量ソナーとその応用手法の開発を目的とし,以下の研究を行った。 1.実船による魚群データの取得とデータ解析 試作した計量ソナーをノルウェーのトロール・巻網漁船に装備し,ニシンやタラのソナーデータと漁獲データを比較した。また国内の巻網漁船に仮装備し,サバ,イカ,ブリのソナーデータと漁獲データを比較した。大型魚群が3千メートル手前から探知され,推定した魚群面積や体積と漁獲データに比例関係が認められた。 2.魚の横方向ターゲットストレングス(TS)の測定 ソナー周波数を含む7周波数の魚群探知機を用いてカタクチイワシ活魚の3次元TSを測定した。TSの姿勢変化に対する変動は高周波ほど大きく,ソナー周波数(24kHz)では小さかった。また,真横からのTSは背方向TSに近く,指向性パターンは8の字形を示した。 3.魚の占有体積(TV)の推定 魚群体積から魚群量を推定するためには1匹の魚のTVが必要となるが,自然状態でのTVの直接測定は困難である。そこで,計量魚群探知機で捉えた魚群の体積後方散乱強度(SV)を魚のTSで割って魚群密度を推定し,魚のTVを考察した。スケトウダラ稚魚のTVは体長の2.6乗に比例すること,昼夜間でTVが8倍変化することが示された。 4.魚群の3次元表示の検討 ノルウェーで得られた航走時の垂直ビームデータを用いて,魚群の3次元形状を再現することができた。また水平ビームデータを用いて,広域の3次元魚群形状を表示すると共に,魚群の移動を解析することができた。 5.研究成果の発表 国内外で開催された水産関連および音響関連の国際学会において,講演および論文発表した。平成18年度の日本水産学会では「計量ソナーの現状と展望」をテーマにしたシンポジウムを開催し,国内の研究者ほか,ノルウェー,オーストラリアからの招へいを実現した。
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