研究分担者 |
中山 耕至 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助手 (50324661)
山下 洋 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (60346038)
中坊 徹次 京都大学, 総合博物館, 教授 (20164270)
上田 拓史 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 助教授 (00128472)
益田 玲爾 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教授 (60324662)
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研究概要 |
2003年4月〜7月ならびに11月,2004年2月〜3月に,有明海湾奥部の筑後川河口域ならびに六角川河口域を中心に,稚魚網による仔稚魚の採集,プランクトンネットや採水器によるかいあし類の採集ならびに水温・塩分・濁度・クロロフィルaなどの環境測定を行った.また,中国広州および青島で採集したタイリクスズキならびに有明海産スズキのミトコンドリアDNA調節領域の塩基配列を調べた.得られた主な知見は以下のとおりである. 1)スズキ卵および浮遊期仔魚は12月上旬をピークに,島原半島沖の湾中央部を中心に広く出現した.発育の進行とともに仔魚は湾奥へと移動(輸送)する傾向が認められた. 2)筑後川の低塩分汽水域に溯上し,かいあし類Sinocalanus sinensisを専食したスズキ仔稚魚の肥満度とRNA/DNA比は塩分15以上の高塩分汽水域にとどまった仔稚魚より有意に高いことが確認された. 3)河川感潮域に生息する汽水性かいあし類Pseudodiaptomus inopinusは全ての発育段階において潮汐に応じて鉛直分布位置を変えること,その行動を河口域内の分布位置によって変化させることにより定位していることが明らかとなった. 4)湾奥部に流入する主要2河川の河口域においてスズキ稚魚と当歳魚の胃内容物を調べた結果,筑後川河口域では体長40mmまではかいあし類S.sinensisを,それ以降はアミ類Acanthomys-is longirostrisを摂餌していたのに対し,六角川河口域では稚魚期の初期から一貫してA.lon-girostrisを摂餌していた.これら両種は有明海特産種あるいは準特産種であり,大陸沿岸遺存性種間に強い捕食-被食関係が存在することが確認された. 5)ミトコンドリアDNA分析の結果,中国南部(広州)と北部(青島)のタイリクスズキは異なる地域個体群に属している可能性が推定された.また,有明海のスズキはタイリクスズキと共通のハプロタイプを持たないことより,有明海スズキにみられるタイリクスズキ型ミトコンドリアDNAは過去の交雑に由来するものであり,現在では新たな供給はないと推測された.
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